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広島地方裁判所 昭和41年(ワ)410号 判決

原告

山本美代

右訴訟代理人

三浦強一

外二名

被告

社団法人広島県歯科医師会

右代表者

河村行夫

右訴訟代理人

早川義彦

外一名

主文

1  原告が被告社団法人広島県歯科医師会の会員の地位を有することを確認する。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一、原告(請求の趣旨)

1  原告が被告社団法人広島県歯科医師会の会員の地位を有することを確認する。

2  被告は、中国新聞朝刊の二段抜き一〇センチメートルの紙面ならびに被告の月刊機関紙「広歯月報」の一段目の横一五センチメートル縦六センチメートルの紙面に、見出しは明朝一号活字、本文は明朝四号活字、広告名義人の表示は明朝二号活字で、「会員除名処分無効の御知らせ」と見出しをつけ、本文を「当会々員山本美代氏に対する昭和四一年一月二三日付の当会代議員会の除名決議は、山本美代氏に本会の体面をけがし、会の綱紀を乱した行動がなかつたことが判明したので、無効であり、従つて山本美代氏は当会々員としての身分を失なつていないことを確認します。当会の山本美代氏除名問題につき同氏をはじめ多数の皆様方に御迷惑をおかけしたことを陳謝いたします。」と、広告名義人を「広島県歯科医師会」と各記載した広告文を各々掲載せよ。

3  訴訟費用は被告の負担とする。との判決。〈後略〉

理由

第一当事者間に争いのない事実

原告は歯科医師の資格を有し、昭和二七年以降訴外広島市歯科医師会、被告県会、訴外日本歯科医師会の各会員となり広島市西平塚町八番一四号で歯科医院を開業していたところ、被告県会は昭和四一年一月二三日臨時代議員会の別紙「会員除名に関する件」事実ならびに理由各欄記載の理由をもつて、原告が被告県会の定款第一七条第一項第三号の「本会の体面をけがした者」および同項第四号の「本会の綱紀を乱した者」に該当するとして原告を除名する旨の決議を経て原告を除名処分に付し、同月二六日原告に対しその旨通知したこと、被告県会の会員たる地位を失う時はさらに訴外日本歯科医師会および同広島市歯科医師会の各会員たる地位も、右各社団法人の定款の定めにより自動的に当然失うことは当事者間に争いがない。

第二除名原因の有無について

一貯蓄組合問題に関する原告の態度

〈証拠〉を綜合すれば、昭和三六年七月ころ広島県歯科医師会代議員会ならびに総会の決議により広島県歯科医師貯蓄組合が発足したこと、右貯蓄組合は組合員の歯科医療設備改善資金、養老資金、不慮の災害を受けた場合の復旧資金、歯科医業界における緊急事態突発の際の医療経営維持資金、その他組合員全員の所属する団体の事業資金の蓄積及び調達に便益を供させるため、団体貯蓄その他の付帯事業を行い組合員の福祉増進に資することを目的とすること、そして右目的を達成するため各組合員は社会保険診療報酬支払基金より毎月組合員が受取るべき診療報酬金のうちより社保、国保その他合算金額に対し月三分の割合による金額を昭和三六年七月分より直接控除すること、原告も昭和三六年八月二八日貯蓄組合へ加入する手続をしたこと、右貯蓄組合は発足後三年毎にその存続を検討する旨の付帯決議が代議員会でなされていたこと、また組合員への融資は発足後三年間は行わない旨決議されていたこと、昭和三九年八月二一日訴外広島市歯科医師会会長(当時前田哲雄)は貯蓄組合存続如何について話しあうため同市歯科医師会の全員総会を開催したこと、右総員会において、原告は貯蓄組合に貯蓄された貯金を会館建設資金に宛ててほしい旨発言し、さらに無記名投票による採決を求めたが、市歯科医師会執行部は総員会は総会ではないから採決はできない旨応答したこと、さらに原告は採決できないのにどうして集めたかと質問したのに対し、執行部側は急を要するので総員会にした旨答えたこと、結局右総員会では貯蓄組合の存続につき特段の議決はなされないまま解散されたこと、原告は右総員会において、途中退場したことはないこと、その後同年八月二三日被告県会の代議員会が開催され、貯蓄組合存続につき決議されたこと、原告は右代議員会を傍聴したこと、その後原告は右代議員会の存続決議は無効であり、また存続につき会員の意見を充分にくみ入れず、執行部の意向を押しつける傾向があるものと判断し、右存続に反対する意味あいもあつて、同年九月一九日付の貯蓄組合理事長(当時高木健吉)宛の貯蓄組合脱退届を提出したが、右脱退届には単に「家庭の事情により」とあるのみで、その具体的理由は記載していなかつたところ、貯蓄組合脱退が認められるのは組合規約上(一)六五才を超えるとき(二)広島県歯科医師会を退会したとき(三)その他特別の事情があつて理事者の承認をえたときのいずれかに該当する場合に限られていたので、高木理事長は原告に対し同年一〇月八日付「広島県歯科医師貯蓄組合脱退届必要的記載事項の追記方御願いについて」と題する書面をもつて、具体的理由の明示を求めたこと、これに対し、原告は同理事長宛昭和三九年一〇月一四日付書面をもつて具体的理由を明示したこと、右理由の要旨は「一、貯蓄組合創立の際三か年間積立てる約束であつたので三か年経過後は預金は自由に使えるものと思つて生活設計をしているため預金の引出しができないと生計に非常な困難を来すこと、二、貯蓄組合の運営に疑義がある、すなわち、広歯月報八月号によれば、「七月二一日……広銀との貯蓄組合預金・担保見返融資の手続が本決まりとなつた」旨記載してあるが、右の点はいつ共済会の総代会にはかられたか、また、いつ組合員にはかられたか不詳であること、八月二三日の代議員会の審議議決は、本来共済会の総代会で審議議決しなければならないものを議決したのであつて、定款ならびに規約に違反している」という点にあつたこと、これを受けた高木理事長は当時の河村被告県会専務理事、桜井被告県会事務局長の同席のもと、原告に対し、脱退届を認めると会の非を認めることになるから脱退は認められないことを通告するとともに経済的理由なら認めないこともない旨告げたこと、そこで、原告はさらに翌四〇年三月三日付同理事長宛書面をもつて、経済的理由のみを詳述して脱退願を提出したこと、その後貯蓄組合理事会は右脱退を承認し、原告がそれまで貯蓄していた預金はすべて返還したこと、以上の事実が認められる。

以上認定した事実中の原告の行為はそれ自体会の体面をけがし若しくは会の綱紀を乱す行為とは認められない。

ところで、被告県会は原告の除名に値する行為として、(A)原告は理事者の説明をきかず、被告県会の定款、共済会の規約、貯蓄組合の規約の関係、組織機構の相互関係を理解せず徒らに昭和三九年八月二三日の代議員会の決議が不当で非民主的であるとか定款違反の疑いがあるなどの言辞を文書あるいは口頭で繰り返して原告集会を困惑させたこと、(B)被告県会の取引銀行に赴き銀行のやつていることは大蔵省令違反ではないかなどと窓口の銀行員に対し言葉激しく詰め寄るなど被告県会と右銀行間の信頼関係を動揺させる言動をしたこと、(C)被告県会の事務局に赴き、関係議事録、銀行との協定書、契約書、その他関係文書、預金通帳に至るまで閲覧を求め、全てについて筆写しようとしたり、写しを渡すと原本を見せるよう要求し、原本がないと答えるやない旨証明して署名押印をせよと事務局へせまるなど非常識極まる行動を数か月にわたり続けたこと、(D)昭和三九年八月二一日の広島市歯科医師会総員会において、前述同趣旨の発言を繰り返し、他人の発言を封じて議事の進行を妨げ、集合した他の会員に貯蓄組合に対する偏見を生じさせるような発言をして会員を動揺させたほか、多数決で存続と決まるとその手続に文句をつけ、挙手では駄目だ。無記名にしろ、とか議事運営について話しあおうとすれば話に応ぜず、非民主的であるとか定款違反であるなどと怒鳴り散らして席を立つなど会員にあるまじき行為をしたこと、(E)被告県会の臨時代議員会で貯蓄組合存続が決まつた以上、これに従うのが会員の義務であるにもかかわらず、原告は規約にない脱退事由をもつて被告県会に脱退願を出したこと(F)これがいれられないとみるや広島法務局人権擁護部に調査を依頼するなど全く的はずれの行動をとり、被告県会の対外的な信用を毀損したことをそれぞれ主張するので、尚右各行為の存否につき検討する。

(A)について

原告が昭和三九年八月二三日の代議員会を傍聴していたこと、右代議員会で貯蓄組合存続の決議がなされたこと、原告は右総員会の右決議は無効である旨の見解をもつていたことは既に認定したとおりであるが、さらに〈証拠〉によれば、右決議の四、五日のち当時の広島市歯科医師会会長前田哲雄に対し、代議員会で右存続をはかつたのはまちがいである旨述べたこと、これに対し、同会長は代議員会でも同じことだと答えたこと、原告は会員の貯蓄組合問題に対する認識を深めようとして会員に対し貯蓄組合問題に関する原告の見解を述べたことがそれぞれ認められ、右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

ところで、〈証拠〉によれば貯蓄組合は被告県会の外廓団体である広島県歯科医師共済会の事業の一部として発足したこと、右共済会ならびに貯蓄組合は被告県会の会員で組織されるけれども、右県会の会員は自動的に右共済会の会員や貯蓄組合の会員となるわけではなく、現実に被告県会の会員でありながら、共済会や貯蓄組合に加入していない者もあること、共済会ならびに貯蓄組合の決議機関として共通の総代会が置かれ、予算及び決算、組合の解散、合併その他重要な事項につき決議すると定められていること、総代会を組織する総代は組合規約により被告県会の代議員に委嘱されるが、県会の代議員が若し組合に加入していない場合には他に総代が選出されるたてまえであること、従つて、被告県会の代議員会と右総代会は機構上は別個の決議機関であることが認められる。

そうすると、貯蓄組合の存続如何の決議は事実上は共済会等の総代会でなすべきであつて、代議員会の形式で決議したのは効力の点はともかく手続違背の疑いがある。したがつて、右の点に疑問を抱き代議員会の議決の違法を主張した原告の行為はいちがいに非難すべきでなく、それのみでは除名事由に該当しない。

(B)について

〈証拠〉によれば、原告が偶々広島銀行へ融資を受けに行つた際、偶然に銀行においてあるパンフレットを見たところ、一般の融資は預金の三倍まで融資される旨記載してあつたが、貯蓄組合員が貯蓄組合と広島銀行との契約に基づき融資を受けようとすれば預金の二倍までしか融資してくれないと聞いていたので、右銀行の行員に対し「それはおかしいではないか」と疑問を提起したが、行員は上司がいないのでわからない旨答えたこと、原告は右行員に対し、銀行のやつていることが大蔵省令に違反するなどの言辞を発したことはないことが認められ、〈証拠判断省略〉。

ところで、〈証拠〉によれば、昭和三九年一〇月一四日貯蓄組合運営特別委員会が開かれ右委員会で貯蓄組合組合員に対する融資方法として、融資総額は貯蓄組合の積立預金総額とし、担保金額の範囲内とすること、組合員一人当りの融資額は貯蓄組合の積立預金総額中自己の受取分の二倍相当額の範囲内とすること、融資方法として、担保は貯蓄組合積立預金担保とし、理事長の包括保証とし、融資の期間は当分の間六か月とすること、利子日歩一銭七厘とすることなどが決定されたことが認められ、右認定に反する被告県会代表者尋問の結果は採用し難い。

そうすると、原告が貯蓄組合組合員に対する融資につき疑問を抱いたのもあながち不当ではなく、たとい広島銀行でなした発言に多少言いすぎの点があるとしても、それのみで除名原因に該当する行為とはいえない。

(C)について

〈証拠〉を綜合すれば、原告は貯蓄組合の貯蓄金を永久に引き去りにされるのではないかと不安に感じたため、貯蓄組合と銀行との契約内容などを確かめるべく約一週間にわたり被告県会事務局に赴き、貯蓄組合関係帳簿、契約書等の閲覧を求め、事務局長はこれに応じ関係書類を閲覧させたこと、原告は右書類の記載内容をメモしたこと、原告はさらに他に銀行との契約書はないかと問い、ない旨答えた事務局長に対し、ない旨を証明するよう署名、捺印を求めたが、同事務局長はこれを拒絶したこと、事務局長が定款違反の具体的事由を明示するよう求めたのに対し、原告は右事由を説明しなかつたことが認められる。

以上の事実に照らすと、原告は事務局長との右折衝の中でいささか当を失した態度を示したことは窺えるが、貯蓄組合調整の帳簿の閲覧を求めること自体は貯蓄組合規約上も認められており右当を失した態度も未だ「本会の体面をけがした」行為とも「本会の綱紀を乱した」行為とまでは認め難い。

(D)について

昭和三九年八月二一日の広島市歯科医師会の総員会審議状況は既に判示したとおりであつて、〈証拠判断省略〉、ほかにこの点に関する被告の主張をうらずけるに足りる明白な証拠はない。

そして、右総員会における原告の行為は、もともと、被告県会の場における行動でないうえ、それは自体除名原因に価するとは認められない。

(E)について

原告が貯蓄組合の脱退願を出した経緯も既に認定したとおりであつて、右脱退届を出した一連の行動にやや当を失した点があるとしても、いまだ除名原因に該当しない。

(F)について

この点についても後述するとおり除名原因に該当するとは認め難い。

以上認められる原告の貯蓄組合問題に関する一連の態度を綜合するに、(C)その他の点においてやや当を失した言動が認められるものの、右事実を合せ考えても除名原因に該当する行為とは認め難い。

二会館建設費負担金の問題に関する原告の態度

〈証拠〉を綜合すると被告県会会館建設に至る経緯につき次の事実が認められる。

すなわち、昭和二五年に被告県会の会館(以下旧会館という)が建築されたが、右会館は建築時の経済事情もあつて早晩改築する予定であつたこと、右会館の敷地は広島県所有地であり、被告県会が借地権を設定していたこと、昭和三二年頃から会館再建の問題が提起され、当初右敷地を県から購入して会館を再建することが検討され、昭和三八年三月被告県会の第二八回定時代議員会および第二〇回定時総会において会館敷地購入再建特別委員会の設置が認められたが、右購入交渉は行き詰まり、結局借地のまま会館を再建することとなり、その後同年九月二日会館再建対策、広大歯学部、機構整備全体協議会(第一回)、同月一五日、同年一〇月二二日、同年一一月二四日、同月二七日、同年一二月一三日、同月一五日、翌三九年二月一三日の会館再建対策小委員会ないし会館建設小委員会において審議、検討を重ねた結果、会館再建の具体案として、本会々館再建設案(以下再建案ともいう)が作成され、右再建案は同月二三日の会館再建対策、広大歯学部、機構整備全体協議会(第二回)の承認を得て、同年三月二二日の被告県会第二九回定時代議員会ならびに同月二九日の被告県会第二一回定時総会において右再建案が原案どおり承認、議決されたこと(右定時総会の決議の効力については後述する)、右再建案の内容は別紙「本会々館再建設案」のとおりであり、右再建計画の実施の具体的細目は会館建設実行委員で構成される会館建設実行委員会で検討することとされたこと、その後、同年四月四日広島県知事宛右会館改築工事施工の認可申請書が提出されたのち、同月五日第一回の会館建設実行委員会が開催され、具体的資金調達方法が決定されるとともに、総務、建築、資金の各常任委員会を設置することが決定され、以降各常任委員会が開かれ、同年六月一九日には会館資金調達を開始し、同年七月一九日には設計図も完成し、同月二一日会館再建土地使用の承認契約、同年八月三一日砂原組との建設契約がそれぞれ締結され、同年一〇月一四日地鎮祭を行つたことがそれぞれ認められ、右事実に反する証拠はない。

ところで、被告県会は、右経緯により決定された会館建設負担金のうち、広島市歯科医師会割当分中無償還負担金一〇〇〇万円について、原告はあえて寄付金呼ばわりをし、寄付を強要強制する不法なものであるとして、被告県会理事者の説明を聞こうとせず、広島法務局人権擁護部に調査を申出たため、新聞紙上に大きく報道され被告県会の信用を失堕させ、さらに人権擁護部の調査の結果問題にする余地のないものであることが了解されたにかかわらず、原告は既納分について返還の支払命令を広島簡易裁判所に申立てたことを除名原因のひとつとして主張し、原告は右徴収金の性質は寄付金である旨主張するのでこの点につき検討する。

〈証拠〉を綜合すると次の事実が認められる。

すなわち、会館建設資金の性質ならびに調達方法について、まず昭和三八年九月一五日、一〇月二三日の会館再建対策小委員会において建設資金は被告県会会員の分担金および寄付金とし、資金調達方法は四案――(A案)全額平等案 一五万円×七〇〇名(被告県会会員のうち、徴収可能見込人数)=一億〇、五〇〇万円、(B案)広島市地区負担 二五万円×二〇〇名=五〇〇〇万円、その他の地区一〇万円×五〇〇名=五〇〇〇万円、(C案)平均平等割分 一〇万円×七〇〇名=七〇〇〇万円、寄付金三〇〇〇万円、(D案)債券証発行 一口五万円×二〇〇〇口=一億円、但し四案を通じ、いずれも償還を基本とする――を検討し、さらに同年一一月二四日の第三回再建対策小委員会において、(C案)の寄付金の割り振りを検討し、次の二案――(C1案)広島市地区一五〇〇万円、但し別に使用料又は維持費を別途算定する、その他の地区一五〇〇万円、(C2案)広島市地区二〇〇〇万円、但し使用料等算定せず、その他の地区一〇〇〇万円――につき会員の意向を調査研究する方向で一致をみたこと、そして昭和三九年三月の代議員会ならびに総会で承認可決された「本会々館再建設案」では基本的には右(C1案)が採用されたが右C1案の全会員平等割分(一人当り一〇万円、即時収納可能見込額七〇〇〇万円)は「償還付負担金」とされ、残額三〇〇〇万円(広島市地区一五〇〇万円、その他の地区一五〇〇万円)に「無償還分負担金」とされ、各都市歯科医師会の分担金は各都市歯科医師会の責任において、これを各々所属会員に賦課徴収して県歯科医師会に納付することが決定されたこと、その後同年四月五日の第一回会館建設実行委員会において、資金調達の具体的方途につき審議され、償還付負担分は昭和三九年七月末日を納期とし、無償還の負担金については納期を昭和四〇年八月末までとし、各都市単位において同年六月から一五か月間毎月定額積立等の方法で善処する旨決定されたこと、広島市地区の負担金の割り振りについては会館建設実行委員会の資金部委員会で審議し、右負担金一五〇〇万円に会館設備費等見込額一〇〇万円を加えた一六〇〇万円を、償還分負担金総額六〇〇万円と無償還負担金総額一〇〇〇万円に分け、償還分負担金は各会員平等に一人三万円宛とし、無償還負担金は各会員の各月の収入から所得に応じて負担することを決定したこと、そして、右広島市の無償還負担金総の徴収方法について、同市歯科医師会会長前田哲雄は被告県会事務局に対し、総額一〇〇〇万円になるまで同市歯科医師会各会員の毎月の保険診療報酬のうちから二パーセント宛引き去るよう事務依頼し、会員の承諾を得ていないことについては同会長が責任をもつ旨の文書を同事務局に提出したこと、以上の事実が認められ、〈証拠判断省略〉。

以上の経緯に照らすと、広島市地区負担分の総額一〇〇〇万円は最終的には任意の寄付金ではなく、定款所定の義務的な負担金とされたことが窺えるが、右負担金は無償還であるため、その意味では寄付金と類似の性格を有しており、当初の小委員会における徴収案では寄付金とされていたこと、その後無償還負担金と決定された後にも被告県会の発行する文書(広歯月報、委任受領金額通知書、受領金額明細通知書)や広島市歯科医師会会長の原告宛文書に「会館建設寄付金」なる文言が使用され、昭和三九年三月二八日の被告県会総会における県会会長説明の中でも「無償還寄付金」なる文言を使用していること(右事実は〈証拠〉により認める)などの事実を斟酌すると、当時被告県会においても広島市地区負担分のうちの一〇〇〇万円について寄付金であるか否かにつき明確に区別して認識していたわけではないことが窺える。また、義務的な会員の負担金といつても、その使用目的や額等の如何によりその賦課徴収が違法となる場合が考えられないでもない。さらに、各会員の保険診療報酬からの二パーセントの差引は前田市会長が会員の承諾を得ることなく決定し、被告県会事務局に差引の事務依頼をしたこと前記認定のとおりであり、右徴収が広島市歯科医師会定款二一条の「応急処分」と認められるとしても事後的に広島市歯科医師会総会の承認を得なければならない(右事実は〈証拠〉により認められる)ところ、右総会の事後承認があつたと認めるに足りる証拠はない。

したがつて、原告が右保険診療からの二パーセントの差引身を寄付金と判断したこと、寄付金が強制徴収されていると判断したことは一応無理からぬことといえなくもない。

したがつて、原告が右負担金の徴収を違法若しくは不当であると被告県会内部で主張すること自体は除名原因にいう「本会の体面をけがした」行為にも「本会の綱紀を乱した行為」にも該当しない。

なお、法務局への調査申出問題、新聞報道の問題、広島県関係への文書送付問題、広島簡易裁判所への訴提起などの外部的行為については後述する。

三定款改正問題

〈証拠〉を綜合すれば次の事実が認められる。

すなわち、広島市歯科医師会理事者は昭和三九年一一月二八日臨時総会を招集し定款の一部改正案を提出したこと、右改正案の要点は、「入会金の規定を定款に定めること、新たに評議員の制度をもうけること、支部制を創設すること、総会の定足数の規定を削除すること、終身会員制を新設すること、会費および負担金の軽減規定を新設すること」などであつたこと、右改正案は一一月二八日の総会当日配布されたこと、これに対し、原告ら数名は右総会席上で臨時総会において定款の改正をすることは定款三二条の規定に違反する、改正案は定款三一条の規定により総会開催日の少なくとも一週間ないし一〇日前には各会員に送付されるべきであるなどの意見を表明し、右の点について議論がなされ、当日は右手続問題の審議のみで、改正案の審議には入らなかつたこと、次いで同年一二月二七日臨時総会が開催され、右改正案が逐条審議されたこと、原告ら県、市歯科医師会会員約二〇名は右二回目の臨時総会に先立ち、広島歯科医師定款研究会を開き右研究会において検討した結果を「定款改正は何を意味するか」と題した書面に記載し、広島市歯科医師会会員に送付し、さらに右臨時総会当日原告を含む四名の連記をもつて「定款改正案に対する修正意見」を提出したこと、原告は右改正案の内容について批判する発言をしたほか、決議にあたつて無記名投票による決議を主張したこと、また採決にあたつて採決が有効であるかどうかの基準となる会員数、賛成数、反対数、棄権数、保留数などを確認すべきである旨主張したこと、ところが、右無記名投票が採用されなかつたのみならず、採決数の確認もなされなかつたこと、その後広歯月報昭和四〇年一月号の郡市会便り欄に定款改正案が賛成大多数で可決確定された旨の記事が掲載されたこと、これに対し、原告らは広島歯科医師定款研究会なる名称で「会員のみなさんに訴う(1)」と題する書面を被告県会会員に送付し、一二月二七日の定款改正は無効である旨主張したこと、結局右改正案は昭和四〇年春の同市歯科医師会定時総会に提出され、全会員二三〇名中一二七名が出席し、採決の結果賛成一二三名、不賛成四名で可決されたこと(右事実のみは成立に争いのない〈証拠〉によりこれを認める)、右改正案はその後約一年後に広島県において認可されたこと(右事実のみは〈証拠〉によりこれを認める)、以上の事実が認められ、〈証拠判断省略〉。

ところで、被告県会は、原告およびその同調者四、五名は昭和三九年一一月二八日の臨時総会において、議事の開始を遮二無二阻止妨害しようとして議長の制止を聞かず他の発言を封じて議場を混乱させ、延々数時間にわたり議場を独占して遂に流会させ、さらに同年一二月二七日の臨時総会においても右同様の方法によつて議場を混乱させ、自己の意見が採用されない見通しとなると、定款変更を阻止せんとして採決に当り議長の制止を聞かず議長の採択宣言した採決方法を不当に非難し、無記名投票にしろ、挙手や起立では非民主的だなどあたり散らして最後には出るところへ出て闘うと捨台詞を残す態度を示し良識ある会員にあるまじき行為をした旨主張し、〈証拠〉によると、原告ら一部の会員が定款改正案に反対するあまり、右各総会で、しつように反対意見を繰り返えし、いろいろな動議を提出して裁決を引き延ばす等の行為におよび、議長らの不馴れや不手ぎわとあいまつて相当議事が混乱し長引いたことが認められる。しかし、小数意見を有する者が自己の意見を反映させるため活発に発言し、あるいは多少の議事引き延し等の方策にでることはやむをえないことであり、〈証拠〉に照らしてみて、原告に歯科医師会員として許されないほど良識に反する行動があつたとは認めがたく、他に右被告主張事実を認めるに足る証拠はない。

また、被告県会は、原告が昭和四〇年春の定時総会で定款改正が可決された後も定款改正を非難する文書を被告県会会員に配布した旨主張するが、右主張を裏付けるに足りる証拠はない。

そうすると、定款改正問題に関する原告の行動は広島市歯科医師会会員として感じた疑問、意見を同会の総会で表明し、また他の会員にも問題を提起すべく文書を送付したにすぎず(外部に対する文書送付の点については後述)、被告県会と直接関係がないことであるばかりでなく、たとい間接に何らかの関係があり、その方法程度に多少のゆきすぎがあるとしても、除名の原因に価するほどのことであるとはとうてい認め難い。

四医事対策費問題に関する原告の態度

〈証拠〉を総合すれば次の事実が認められる。

すなわち、被告県会は昭和二六年頃から医事対策費名目で被告県会会員から各会員当り月額三〇〇円ないし六〇〇円の負担金を徴収していたこと、右医事対策費の設定目的は被告県会の会務の拡張、会の発展のため緊急に活動するための資金にするためであり、具体的には医療保険改悪阻止の運動資金、広島大学歯学部の設置運動の資金、日歯政連会費などとして予定されたこと、右対策費の毎年度の賦課額や徴収方法などは、昭和三一年までは被告県会の代議員、理事、監事、都市歯科医師会長、その他会員有志などによつて構成される別個の複合組織体によつて決定されていたが、昭和三二年から毎年度の被告県会の代議員会で審議、議決された後総会において会務報告の一部として報告されていたこと、各人の負担額は毎月三〇〇円の年が多かつたが、昭和四〇年度は毎月六〇〇円とされたこと、昭和四〇年七月頃参議院議員選挙が実施されたこと、右対策費の使途は各会員には明らかにされず、会員の中にも原告が問題を提起するまで、その明細を明確にするよう要求した者はなかつたこと、少なくとも被告県会の慣行上右対策費の使途は非公開にしていたこと、ところが、原告は昭和四〇年三月二八日の被告県会の総会において、維持対策費が予算にくみ入れてなく、決算報告もされていなかつたので、その理由を問いただすとともに、総会に提出された被告県会行事報告書の中に「政連」なる委員会が度々開催されていることが記載されていたため、右「政連」の内容、医事対策費との関連等理事者側に質問したこと、これに対し、理事者側は、医事対策費は予算にくみ入れなくともよい、決算報告をしなくてもよいとの約束のもとに徴収しており、非公開が決議されているのであるから公開する必要はない旨答弁したこと、これに対し、原告はさらに右総会の席上質問を続行しようとしたところ、議長は他の案件もあるので後で審議すると言つて、右質問は打ち切られ、結局当日はそれ以上対策費問題に関する審議は続行されなかつたこと、そのころの被告県会の会員に対する会報に本年度(昭和四〇年度)は参議院議員選挙もあり多くの出費が予定されるので六〇〇円徴収する旨の記事が掲載されていたこと、右のような経緯中で、原告は医事対策費が選挙費用ないし「政連」の費用に使用されているのではないかとの疑惑を抱き、被告県会事務局に赴き、医事対策費関係の帳簿を閲覧させるよう要求したこと、ところが事務局長は、会長の指示どおり、監事の承認を得なければ閲覧ささない旨答えたため、原告はさらに監事の承認を求めたが、同監事は事務局長がそのように言つたかどうか疑問であるとして、結局閲覧を許可しなかつたこと、そこで、原告は同年八月ころ広島地方裁判所に対し、被告県会ならびに広島市歯科医師会を相手方として、「被申請人ら(被告県会ならびに広島市歯科医師会)の別紙目録記載の物件(被申請人らがそれぞれ保管する、両会の対策費名目の会員負担金につき、その収支の明細を記載せる帳簿一切)に対する占有をそれぞれ解いて申請人の委任する広島地方裁判所執行吏に執行の日から五日間に限りその占有を移す。執行吏は右期間内に限り申請人又はその代理人に右帳簿の閲覧又は謄写を許し、それが終つたときは、これを被申請人にそれぞれ返還しなければならない。執行吏は被申請人が業務上の必要により右帳簿類の使用を申出たときは既になされている記載を変更しないことを条件として被申請人に使用を許すことができる。」との仮処分命令を申請したところ、同裁判所は同年八月二一日右申請を却下する旨決定したこと、そこで原告はさらに、同年九月ころ広島高等裁判所に対し、右却下決定を不服として抗告したが、同裁判所は同年一二月二七日仮処分の必要性なしとの理由により右抗告を棄却したこと、以上の事実が認められ、〈証拠判断省略〉。

以上、認定したところによれば、医事対策費は被告県会の代議員会によつて、その賦課額、賦課方法が決定され、原則として被告県会の各会員から毎月徴収されていて、その支払は任意の拠出でなく義務的なものとされているから、定款一三条の規定により会費のほかに賦課徴収が認められている負担金と解するのが相当である。

そして、社団法人広島県歯科医師会々計規程二〇条によれば「会費その他一切の収入を歳入とし、一切の経費を歳出とし、歳入歳出は総予算にこれを編入する」のであるから、右対策費も本来総予算に編入すべきである。

ところで、予算は代議員会の議決又は承認を要する(被告県会定款四〇条)のみならず、総会の議決又は承認を要する(同定款三四条)のであるから、被告県会の各会員は右総会における議決権を行使するための前提的な権利として右各予算にかかげられる負担金等の使用目的等につき、総会において質問することはもとより、理事者らに対し、会計帳簿の閲覧を求めることもその目的が不正なものでないかぎりできると解すべきである。

右法理は維持対策費についても該当すると解せられる。〈証拠〉などには、右対策費は当初から非公開が決議されているとの供述ないし記載部分も窺えるが、はたして何時決議されたのか、また総会で決議されたのか、代議員会で決議されたのか、はたまた別の機関でか、など全く不明であつて、俄かに採用できない。たとい、決議ないし慣行があるとしても、原告ら一部会員にその存在や負担金の趣旨、使途等が不明であつたのに、被告理事者側に十分な説明が行われたとも見られないことを考えると、原告が、右維持対策費関係の帳簿の閲覧を求めたことは一応むりからぬことであり、他にその目的が不正であると認めるに足りる証拠はないから、右帳簿の閲覧請求自体は何ら除名原因に該当しない。

ちなみに、右帳簿の閲覧を求めて、前掲仮処分を広島地方裁判所に申請し、さらに同裁判所の却下決定に対し、広島高等裁判所に抗告を申立てたことが除名原因に該当するかどうか判断するに、一般的には裁判所に権利の最終的救済を求めることは社団の構成員として、はたまた国民としての権利に属すること、反面右権利は濫用されてはならないことは言うまでもないところ、結果的には原告はいずれの裁判所においても敗訴したのであり、また右申請が理事者側をして原告の除名を決意させる重要な一因となつたこと後述のとおりであるから、右申請自体は方法として最良の方策であつたかという点において疑問なしとしないが、右申請は保全の必要性なしとして却下されたのであつて、前記認定事実によると仮処分申請の方法に出たこと自体が権利の濫用であるということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。そうすると、仮処分の申請も除名原因に該当しないというほかない。

五原告の外部に対する行為

(一)  広島県に対する陳情問題

〈証拠〉によれば、原告ほか四名は昭和三九年一二月二八日付の「定款改正異議申立陳情書」と題する書面を「山本美代ほか四名」の名義をもつて、広島県知事(当時永野厳雄)宛提出したこと、その内容は前記広島市歯科医師会の臨時総会における同会の定款改正は無効であるので右定款改正を認可しないよう求めたものであつて、その理由を具体的に明示し、資料を添付していたこと、さらに原告ら六名は昭和四〇年一月一六日付の「広島市歯科医師会、広島県歯科医師会に関する陳情書」と題する書面を「山本美代、藤井庫槌、青木重助、和田稔、青山巌、川本徳二」の連名で、同県知事宛提出したこと、右書面の内容は前記定款改正問題のほか、広島県歯科医師会館問題、貯蓄組合問題に関しても疑問を提起したうえ、監督官庁である広島県に対し「会員の利益と権利を守るため善処することを切望する」旨要望したものであつたことがそれぞれ認められ、右認定に反する証拠はない。

ところで、被告は、原告が右書面のほか、乙二号証の二(甲一号証も同一)と同一の「陳述書」と題する書面を広島県議会厚生委員会に提出していると主張し、原告は、これを争うので、この点につき判断する。

まず、証人桜井政人は、乙二号証の二は、被告県会の会員が、昭和四〇年春頃被告県会の医事対策全体会の席上県議会の厚生委員会に提出されたものであるとして持参してきたものをすぐ事務局において謄写したものである、原本はタイプであつた、差出人の名前は陳述書の末尾にあり、組織のような名前であつた(この点について証人桜井自身後に供述を変遷する)、右差出人の名前と日付は謄写の段階で除いた、封筒は厚生委員会の委員長に後日みせてもらい、そのうち、二通に山本美代の名前があつた旨証言し、被告県会代表者河村行夫は、厚生委員会に記名入りの投書が来ているときいて、被告県会会長(当時高木健吉)事務局長(桜井政人)と一緒に県議会の控室に行つて見せてもらつたもので、原本はタイプではなかつた旨供述し、証人前田哲雄は会館で原本を見たが、タイプであり、名前は書いてなかつたように思う旨証言し、証人高木健吉は原本は肉筆であつたと思う、それを原告が書いたものであると確認はしていないが書体などから原告の作成したものと判断した旨証言しており、右各供述は原本に署名があつたか否か、タイプであつたか肉筆であつたかという重要な点において、くいちがつており、いずれも俄かにそのまま採用し難く、他に乙二号証の二(甲一号証)の原本が原告により作成されたものであると認めるに足りる証拠はない。

そうすると、前掲甲一五号証、同一六号証の記載内容の陳情書を広島県知事宛提出したことが除名原因に該当するかどうかを判断すれば足りるところ、被告県会は法人であり、法人の業務は主務官庁の監督に属し、主務官庁は何時にても法人の業務および財産の状況を検査することができるし(民法六七条)、また定款の変更は主務官庁の認可を要する(民法三八条二項)のであるから、被告県会の監督官庁である広島県に対し、被告県会の調査の発動を陳情することは、その陳情がことさら虚偽の事実を申立て被告県会の対外的信用をけがす目的でなされた場合でないかぎり被告県会会員の権利として認められるところである。

そして、原告らの右陳情は、性急のきらいがなくもないけれども、原告らのみの利害を顧慮してなされたものでなく、全会員の幸せと生活を守ることが必要であるとの考えからなされたものであつて、ことさら虚偽の事実を申立て被告県会の対外的信用をけがす目的でなされたものとまでいえないことは、〈証拠〉によりこれを認めることができる。

よつて、原告の広島県に対する陳情行為はそれ自体除名原因に該当しない。

(二)  広島簡易裁判所への訴訟提起

原告が昭和四〇年八月頃、広島簡易裁判所に対し、被告県会を相手方として、前記会館建設負担金九一四〇円の返還を求める支払命令の申立をしたことは当事者間に争いがない。

ところで、既に認定した会館建設費問題の経緯、これに対する原告の見解、後述の公開質問状の提出の経緯、〈証拠〉によつて認められる、原告が昭和四〇年六月一六日広島市歯科医師会会長宛右負担金九一四〇円の返還を求めたが、右負担金は返還されなかつた事実などに照らすと、原告が最後の手段として裁判所にその救済を求めたことが窺われ、右訴訟提起が方法的に最も妥当なものであつたかどうかについては疑問なしとしないが、権利の濫用であると認めるに足りる証拠はなく、裁判所に救済を求めること自体は社団の一員の権利として、また国民の権利として認められるところであるから、被告主張の除名原因に該当するとはいえない。

(三)  法務局に対する陳訴ならびに新聞報道について

〈証拠〉を綜合すると、次の事実が認められる。

すなわち、昭和三九年一二月頃の被告県会の医事対策委員会の席上原告を除名にすべきだとの声があがつたこと、同月末、右除名のうわさを耳にした原告は不安になつて、はたして原告のそれまでの行為が除名原因に該当するのかどうか確かめるべく、広島法務局人権擁護部へ相談に行つたこと、右人権擁護部において、原告は貯蓄組合問題、会館建設費負担金の問題などについて実情を説明し、原告の見解を明らかにしたこと、法務局側では被告県会の会長、事務局長、広島市歯科医師会長を呼び出して実情を調査したこと、ところが昭和四〇年一月九日中国新聞紙上『広島県歯科医師会館建設、分担金集めで行き過ぎ?、強制的に天引き〔広島市内在住会員〕、訴えで法務局乗り出す』と見出しを付して報道されたこと、右記事には前田広島市歯科医師会長の談話も掲載されたこと、次いで翌一〇日付の毎日新聞広島版紙上にも『女医さんから横ヤリ、県歯科医師会館建設の分担金、納得できぬ天引き、法務局へ訴え「既納分返せ」と要求』と見出しを付して報道されたこと、右記事には前田広島市歯科医師会長の談話のほか原告の談話も掲載されたこと、以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

右経緯ならびに〈証拠〉に照らすと、右各新聞報道は、原告が積極的に新聞記者に対し建設費負担の問題を暴露したのではなく、原告の法務局への相談が契機となつたものであつて、しかも原告が法務局へ提起した問題のひとつのみが新聞紙上大きく取りあげられたものと認められる。

したがつて、新聞に報道されたことにつき原告に全く関係がないとはいえないとしても、原告が積極的に企図したものとは認められないから、この点は被告主張の除名原因に当らないものである。

また、法務局への陳訴自体も、その動機は原告が除名処分を受けるのではないかとの不安を感じ相談に赴いたところにあること右に認定したとおりであるから、方法として最良の策であつたかどうかはさておき、これまた被告主張の除名原因に該当する行為とは認め難い。

よつて、この点に関する被告の主張も採用し難い。

六被告県会会員への文書配布ならびに公開質問状の提出

まず、原告らが被告県会会員へ「会員のみなさんに訴う(1)」、「定款改正は何を意味するか」「定款改正に対する修正意見」と題する各書面を提出したことが除名原因に該当しないことは既に定款改正問題に関して述べたとおりである。

ところで、〈証拠〉によれば原告は、前記新聞紙上で会館建設費問題が報道されたのち、被告県会会員に対し、「歯科医師会のみなさんに訴う」と題する書面を配布したことが認められるが、右各証拠によれば、右書面の内容は新聞報道に至つた経緯ならびに原告の会館建設費負担金の問題に対する原告の見解を述べたものであつて、徒らに被告県会執行部に対する会員の不信感を助長するために提出されたものではないことが認められる。

そうすると、右書面の配付は被告主張の除名原因に該当しない。

次に、〈証拠〉を綜合すると、原告らはかねてから、会館建設費負担金の問題について疑問を抱いていた(右事実はすでに会館建設費負担金の問題の項で認定したとおりである)ところ、昭和四〇年二月一〇日付広島県歯科医師会発行の「広歯月報」の都市会便りの欄に「前田会長は語る」として(省略)市の八万円宛分担については資金部委員会を設けて数回にわたり、協議に協議を重ねて償還分負担金三万円宛、無償還負担金五万円×二〇〇名=一〇〇〇万円を各月の収入より所得に応じて負担していただくことが最も公平である……との結論の答申を得て総会に諮り承認されたものを全会員に提出して頂いているのであつて決して寄付を仰いでいるものではありません(以下省略)」と記載してあつたため、「広島歯科医師会定款研究会」なる名義で、広島市歯科医師会長前田哲雄宛、昭和四〇年三月三日付の「広島市歯科医師会長前田氏に対する公開質問状」と題する書面を提出し、右月報記載の資金部委員会の設置根拠、発足年月日、構成員の内容、同委員会の答甲の内容、答申提出の年月日、総会の開催されだ年月日、審議経過、決議事項、総会内容の通知の有無、「寄付金」という名称をこれまで使用してきたことの理由、寄付金は強制してもよいのか、などの質問に対する答えを求めたこと、以上の事実が認められ、右事実に反する証拠はない。

ところで、被告県会は、右公開質問状における質問事項はその詳細は既に広歯月報において逐次会員に報じているのであつて、右のような事項につき公開質問状を提出することは被告県会に対する会員の不信感を助長し、会の団結を乱し、会の秩序を乱す行為であると主張する。

なるほど、「公開質問状」なる表現はいささか穏当を欠き、広島市歯科医師会長が揚げ足し取りをねらつた書面であるとの疑惑を抱いた(右事実は〈証拠〉によりこれを認める)のも当時の状況からみてむりからぬところではあるが、原告らが右「公開質問状」なる題名にした真意は、原告らのみならず被告県会の会員全体に広歯月報等を通じて明確に答弁してもらいたいという点にあつた(右事実は原告本人尋問の結果によりこれを認める)ものと認められる。

また、前記質問状の質問事項について、昭和四〇年三月三日までの段階において、広歯月報において、会館改築問題の経緯、会館建設費負担徴収に関する昭和三九年の定時総会審議状況、会館建設の歩みなどの具体的状況が明らかにされていたが、広島市歯科医師会内部の負担金の具体的徴収方法、会員の同意の有無などについては未だ明確にされていなかつた(以下の事実は〈証拠〉を綜合してこれを認める)のであるから、右事項につき質問すること自体は県、市会の秩序を乱す行為とはいえない。

そうすると、原告らの公開質問状の提出は表題の選定その他に穏当を欠く点があるとしても、いまだ会員の不信感を助長し秩序を乱すことには当らない。

七除名原因に対する結論

以上認定したところによると、原告には被告県会理事者の非を追及するあまり、手段のうえで執拗にすぎやや当を失した行為が認められなくもないが、一面被告側にも原告の問題提起に対し適切な措置をとらなかつたため紛議が一段と深刻になつたふしが見られ、これらの点をすべて合せ考えても、いまだ原告の運動が除名原因としての「会の体面をけがした」行為若しくは「会の綱紀を乱した」行為にあたるとは解されない。

よつて、被告県会の原告に対する除名処分は除名原因がないのにこれをあるとしてなされたものであるから、無効であるが、原告は被告県会に対し、請求の趣旨二項の謝罪広告を求めているので、なお、右除名処分をなすに至つた顛末、手続面における適法性如何につき判断する。

第三除名処分に至る経緯

一昭和四〇年一二月一九日の各種医事対策組織委員会に至る経緯

〈証拠〉を綜合すると、昭和三九年一二月の対策委員会の席上原告を除名すべきであるとの声があつたが、理事者側は説得の余地があるとして一年間様子を見る旨答弁したこと、ところが、翌四〇年新聞報道、県の調査、簡易裁判所への訴提起、地方裁判所への仮処分申請、高等裁判所への抗告などの問題が生じ、同年一一月三日の被告県会長老者よりなるいわゆる「先輩の会」で原告を除名すべきであるとの発言が再びなされたこと、一方被告県会の理事者側も右各訴訟における弁護士費用などを捻出するため、医事対策委員会の開催を期するとともに、会員に被告県会の見解を明らかにするため同年一二月一一日ころ被告県会会長(当時高木健吉)、広島市歯科医師会会長(当時前田哲雄)、両名名義で「報告書」(乙三号証)を各会員に配布したこと、そして、同月一九日被告県会の各種医事対策委員会の全体委員会が開かれたこと、右委員会は以後医事対策組織委員会と改称することに決定されたこと、当時医事対策委員会は郡市の会長等約四〇名、代議員約四〇名によつて構成されており、対策委員の選任は被告県会の執行部で検討していたこと、当日の委員会には約六〇名が出席したこと、右委員会の席上、理事者側が医事対策費の問題に関連して原告のこれまでの行動を批判したところ、対策委員の中から原告を除名すべきであるとの声があり、理事者側も除名をやむをえないものとしたが、執行部自体が音頭を取ることまでは決心していない、会員のみなさんが相談のうえで申し出れば、執行部として協力してゆくことにやぶさかではない旨答弁したこと、結局右委員会における審議の結果、除名の署名を集めること、右署名を集める期限は同月二五日までとすることが了承されたこと、以上の事実が認められ、右認定を左右する明白な証拠はない。

二署名運動の実情

〈証拠〉を綜合すると、前記医事対策組織委員会に出席した対策委員らは、右委員会における署名を集めることの了承事項に基づき、各地区において署名運動を展開したこと、右署名の方法は各地区にまかされていたため、個人別に署名を被告県会に送付した地区もあり、地区全体まとめて署名を連記した地区もあつたこと、各地区における除名に至る経緯、原告の除名原因に対する説明は必ずしも充分ではなく、「代議員会」で「決議」されたのだからとか、対策委員で原告の除名が決まつたのだからしようがないとの説明がなされた地区もあつたこと、右署名が手続的に原告の除名とどのように関連づけられるか説明はなされなかつたこと、署名の期限はその後、年末までとなり、さらに延期され、結局昭和四一年一月二三日の除名決議当日に被告県会事務局へ届いたものもあつたこと、右署名の内容は種々まちまちであり、除名の理由を付して除名をやむなしとする署名もあり、即刻除名するよう求める署名もあるが、除名を最善の策とは思わないが、話し合いの余地がなければやむを得ないとする署名や円満和解をのぞむ署名も見受けられ、また署名のみでその趣旨が何ら記載してないものも見受けられること、以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

三昭和四一年一月二三日の被告県会臨時代議員会における審議状況〈証拠〉によれば、昭和四一年一月八日ころ郡市会長会議が開催され、右会議の席上、理事者側は原告をすみやかに除名すべきでとあるつきあげられたこと、そこで、理事者側は同月二三日に被告県会代議員会を開催することにし、同月一三日各代議員に対し招集通知を出したこと、右招集通知には議題を付したのみで、議題の資料、議案の内容は送付しなかつたこと、同月二三日の代議員会の席上、原告の除名議案の資料として乙二号証の一ないし二五の書類が提出されたこと、右代議員会には会長一名、副会長二名、理事一三名、監事二名、顧問二名、代議員三七名が出席したこと、右代議員会では若干の会務報告がなされたあと、まず第一号議案「会員除名手続に関する件」が審議され、逐条審議の結果満場一致で「社団法人広島県歯科医師会々員除名手続規程」が可決され、引続き第二号議案の「原告除名に関する件」が審議されたこと、右審議の中で、なぜ広島市歯科医師会の方で除名決議をせずに被告県会で除名決議をしなければならないかの質疑応答が交されたこと、除名原因判断資料たる書面については主に第一枚目に綴られていた乙二号証の二の「陳述書」の記載事項の真実性如何が審議されたが右乙二号証の二がはたして真実原告が作成したか否かにつき質疑応答はなかつたこと、除名問題は大きな問題であるからいささか猶予期間をおいたらどうか、除名そのものには反対はないと思うが、手続上の問題が残る、署名に対する法的根拠はどうか、除名後前非を悔いて謝罪してきた場合どうするか、などの意見も出されたが、結局は挙手による採決方法によつて全員一致(但し、武田正規代議員のみは除名に対する責任を一般会員に負わせないことを条件として賛成)の決議により、同日決議可決された除名手続規定第五条但書を適用して原告の除名を可決したこと、以上の事実が認められ、右認定事実をくつがえすに足りる証拠はない。

第四除名決議の手続的瑕疵

以上認定したところによれば、被告県会は原告を除名するにあたり、右除名決議をした当日の代議員会の席上でまず「広島県歯科医師会々員除名手続規定」の制定を決議し、右手続規定第五条但書を適用して原告に弁明の機会を与えることなく直ちに除名の決議をなしたことが明らかである。

一そこで、まず、右除名手続規定の効力発生時期ないし、手続規定の効力の及ぶ時間的範囲(すなわち、遡及効如何)について、審究するに、右規程は手続に関する規定であるとはいうものの、被告県会の会員としての身分の剥奪の手続を定めるものであり、会員個々人の存立基盤に重大な影響を及ぼす規定であり、実体的規定に匹敵するほどの重要な規定であるのみならず、規定の性質上からも、施行日の定めがない場合には右手続規定が効力を発生するのは、各会員右規定の制定されたことが告知された時期と解すべきである。また、右効力の遡及効についても同様の理由により、これを否定すべきである。

そうすると、手続規定制定を決議した当日の代議員会で右規定を適用して原告の除名を決議した昭和四一年一月二三日の代議員会の決議には、すでに右の点において重大な瑕疵がある。

二さらに、仮に右手続規定が即日効力を有すると解しても、右手続規定に合致するかどうかは厳格に判断しなければならない。

(一)  まず、同規定二条によれば、「定款一七条各号の該当事実の有無に関する規定は、すべてこれを確認すべき資料すなわち証拠によらなければならない、単なる風評、流説の類はこれを証拠資料とすることはできない」と規定する(〈証拠〉によりこれを認める)ところ、前記代議員会には乙二号証の二の「陳述書」なる書面が除名資料として提出されており、しかも、右書面が原告によつて作成されたとの証拠はなく、右代議員会でも右事実が確認、調査されたことはないこと既に認定したとおりであるから、右乙二号証の二の提出は右規定二条の精神にもとるというべきである。

(二)  また、同規定五条本文によれば「除名処分の決議をするに当つては、当該除名処分を受ける者に予め弁明の機会を与えなければならない」と規定しており、右規定は自然的正義の原則を明文化したものであつて、右規定の精神は十分に尊重すべきところ、前同条但書によれば「但し当該処分を受ける者の行為についてその弁明を待つまでもなく充分なる証拠資料を擁し、確信をもつて該当事実を認定することができ、(以下、第一条件と略す)その行状に情状酌量の余地がないものと認められ(以下、第二条件と略す)かつ会員の三分の二以上より緊急除名手続の取り運びの要請があつた者(以下、第三条件と略す)についてはこの限りではない。」と規定しているが、右但書規定は本文の精神に照らし、厳格に解釈しなければならない。ところで、右第一、第二の条件を満たしていないことは除名原因に関して既に判示しているところからも自ら明らかであるが、なお第三条件を満たしていたかどうかにつき案ずるに、前記除名決議に至る経緯一、二で認定したように、除名の署名は昭和四〇年一二月一九日の医事対策委員会の了承のもとに各医事対策委員らが中心となつて集めたのであるが、右署名が除名手続の中でどういう手続的役割を果たすかについては必ずしも右医事対策委員会で一致をみていなかつたし、手続規定の案すらできていなかつたので、各会員に対して署名の効果、手続的意義については説明がなされなかつた。したがつて、各会員は、右署名が結果的に、昭和四一年一月二三日の代議員会決議において、原告の弁明をきかずに除名することの一条件とされるとは予想していなかつたと推認される。右事実は、署名の中には話し合いの余地がなければやむをえないとする署名や円満和解をのぞむ署名が窺えること(この点も既に認定したとおりである)によつても充分に裏付けられる。

しかるに、代議員会においては右署名原本は資料として配布されず、したがつて右署名の内容、効果を検討することなく、単に資料として提出された「山本美代氏即時除名要請署(名)提出会員郡市別調書」によつて、前記第三条件を満たすものと判断されたことが、〈証拠〉によつて認められる。

そうすると、右第三条件をも満たしていないと断ぜざるをえない。したがつて、被告県会は原告を除名するにあたり、予め原告に弁明の機会を与えなければならないところ右弁明の機会を与えたと認めるに足りる証拠はない。

よつて、代議員会における原告の除名決議はこの点においても手続的に違法である。

三結論

右各手続規定違反はいずれも重要なものであるから、原告に対する代議員会の除名決議は無効であると解すべきであり本件除名処分は実体的のみならず手続的にも無効ということができる。

第五謝罪広告を求める原告の請求(請求の趣旨第二項)について

原告は被告県会(被告県会代表者と善解する)は原告の除名が無効であることを知りながら、又は過失により知らないで原告を除名し、さらに右除名の通知を記載した書面を原告ほか被告県会の各会員に配布し、右除名の事実は昭和四一年二月一二日発行の中国新聞紙上に大きく取り上げられたため、原告は歯科医師としても社会人としても著しく名誉を侵害され、業務上の信用を失墜させられたので、右名誉回復の措置として請求の趣旨第二項の謝罪広告を求めているので、その当否につき判断する。

まず、被告県会(被告県会代表者)が原告の除名が無効であることを知り、または過失により知らなかつたと認めうるか否かであるが、右被告県会の理事者が除名決議の無効を知つていたことを認めるに足りる証拠はなく、かえつて、前に認定した、理事者側は昭和四〇年一二月の医事対策組織委員会で医事対策委員の多数より原告を除名せよとの声があがり理事者側もやむなく除名の手続をとることを決意した事実、原告の除名を求める署名が多数提出された事実、昭和四一年一月八日の郡市会長会議においても理事者側は除名を急ぐようつきあげられた事実、同月二三日の代議員会においても全員一致で原告の除名が決議された事実及び原告にも積極的に理事者側と対話を求める態度に欠けるところがあつた事実(右事実は〈証拠〉によりこれを認める)などに照らすと、被告県会の理事者は原告の除名が無効であることを認識しなかつたことはもとより認識しないことにつき過失はなかつたと認めるのが相当であり、他に理事者の故意、過失を認めるに足りる証拠はない。

右の次第で被告県会理事者に不法行為上の責任は認め難いから、謝罪広告が原告の名誉回復の方法として適当であるかどうかを判断するまでもなく、右広告を求める原告の請求は理由がない。

第六結論

よつて、原告の請求は原告が被出口県会の会員であることの確認を求める限度において正当であるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書を適用して主文のとおり判決する。

(五十部一夫 若林昌子 池田和人)

本会々館再建設案

この会館再建案は、去る第二八回定時代議員会及び第二〇回定時総会の承認に基き去る昭和三八年九月二日設置開催の会館再建対策等全体協議会委員会の決議により組織せられた小委員会において数次(全体協議会の二回を含めて五回)に亘り討議慎重審議の上結論を見、全体協議会の承認を得て答申せられたものである。

一 会館の再建規模と仕様

(1) 建設用地 現賃借中の現会館敷地面積二〇〇坪

(2) 工費 一億円とする。

(3) 規模の概要 六階建延坪数約七五〇坪程度のもの

(4) 会館の仕様と事業目論見の概要

1 口腔衛生センターの設置

① 口腔衛生相談室

② 口腔衛生展示室

③ 口腔衛生普及広報室

2 児童福祉センターの設置

① 市内及び近郊の学童、生徒の予防処置

② 僻地学童、生徒の予防処置(僻地学童、生徒の宿泊収容施設の併置)

③ 地域社会福祉活動への協力施設

3 歯科学術関係施設の設置

① 研究室

② 示説室

③ 図書室

4 既設の科医衛生士養成所の拡充整備と施設の充実

5 会員福祉施設の整備

6 管理施設の整備

① 事務室

② 会議室

③ 管理者室

七 大講堂の設置

八 乗用車駐車収容施設の整備

九 技工士問題対策其の他本会の目的達成に必要な施設の整備

二 会館再建資金の調達

(1) 償還付負担金 全会員平等割、一人当り一〇万円

上記償還付負担金については、債券証書を発行し、会員の死亡、退会の際債券証書と引換に償還するものとする。

なお、会館維持運営上剰余金と認められるものが生じたときは、抽せんその他代議員会の決議をもつて定める方法により債券証書と引換に償還するものとする。

(即時収納可能見込額七、〇〇〇万円)

(2) 無償還分負担金 総額三、〇〇〇万円

上記の無償還分負担金については、各郡市歯科医師会において次の割合をもつて分担し各郡市歯科医師会の分担金は各郡市歯科医師会の責任においてこれを各各所属会員に賦課徴収して県歯科医師会に納付するものとする。

1 広島市歯科医師会割当負担金総額 一、五〇〇万円

2 其の他の郡市  〃

一、五〇〇万円

内訳

呉市 二五二万円 佐伯 七八万円

三原  九〇万円 高田 三六万円

尾道  八七万円 安佐 六六万円

福山 一四四万円 比婆 四八万円

松永  四二万円 双三 七五万円

因島  四二万円 山県 二七万円

大竹  三六万円 甲奴 一八万円

安芸 一三二万円 神石 一八万円

賀茂  六九万円 世羅・御調二七万円

豊田 一一七万円 府・芦・深九六万円

(3) 負担金の払込方法

上記いずれの負担金の納付についても金額一時即納払込方式を採択し、その払込資金調達の困難なるものについては、会員各個別宛に元利込め五カ年間(六〇カ月)の各月なしくずしの延払返還方法による融資の幹旋を行うこと

なお、その他やむを得ない理由による特別の事情(極度の困難性その他)にあると認められる会員に対しては、理事会又は別途に設置を想定せられる特別委員会等の議を得て別の方法を考慮すること。

三 右計画の実施の具体的細目に関する事項については、新たに設置する建設委員会に附議して決定し、その実行は、建設委員会の議を得て選任する実行委員をしてこれに当らしめること。

第二号議案 会員除名に関する件

一、事案

次の者を定款第十七条第一項第三号及び第四号により除名の決議を求める。

広島市、会員 山本美代

二、事実

(1) 広島県への陳述書の提出(2)法務局への提訴(3)簡易裁判所への提訴(4)地方裁判所への提訴その決定を不服とする高等裁判所への抗告(既に棄却決定)(5)会員の疑惑、動揺、不信感を助勢扇動を策するような文書の数次に亘る配布(6)その他これらと一連の数々の所為(山本美代提訴事件に関する報告書参照)等その内容とせられおるものの殆んどは、事の真実真相を伝えたものはなく、またこれを努めて理事者に質そうとしないのみか、理事者の面談説明に絶対に耳をかそうとせず時間的に制約を受け故事来歴にまで及んで理非を解して載くまで意を尽して説明致し兼ねる多衆の前を殊更選んで、謙虚に真を質そうとせず只自己流の勝手粗野な而も飽くなき猜疑心を前提としその上に構成された憶測的推論を基にした理不尽な攻撃的主張のみを事とし、事の理非を敢えて明らかにしようとせられず、理事者の執れる手続や内容を真の法理を弁えず、常に不法呼ばわりをして会員を扇動し自ら会の決定意思に従わず、会秩序を乱した上、対内対外を問わず殊更事実を歪曲して伝えて会員の疑惑、動揺、不信感助勢と会秩序の紊乱、会員の団結を乱し、会の社会的信用と栄誉失墜を図り、その責任を理事者に転化して失格せしめ、会を自己の主義主張の下にその支配を壟断せんとする意図と実行々為の事実は別添えのこれを確認すべき資料に基き歴然たるものがある。

三、理由

会内での内輪の論議は、何事によらず如何に鋭く対立しようと口論激しく紛議しようと会自らの発展のため、建設のためならば即ち真の愛会精神を基底とするものなれば問題でなく罵詈雑言と難も許せるし、理事者に対する悪口批判は素より、会員多数の意に沿わなければリコール運動もまた可であり、問題でない。然し正規の機関において正規の手続きによつて一旦決つた会内の秩序は、如何に不満足であろうとこの修正はまた他日を期してお互いに努力し合うこととし、ともかくその秩序に服すべきが、会員の本分であろう、秩序なき団体は、崩壊以外考えられない筈である。然るに山本美代氏の所為は、自ら会秩序を無視してこれに従わざるのみか、理事者の説明に耳をかさず事実は素より法理までも歪曲して会員に伝えその疑惑、動揺、不信感を煽る一方、これを更に外部に持出して、これを益々助勢して会秩序の紊乱を策し、これまで本会の鋭意培つて来た社会的栄誉と信用即ち吾が誇るべき団結の美と事業成果、これから来る社会的栄誉と能力評価、将来に対する信用、信頼感を少なからず汚しその上監督庁においても絶対的信頼を寄せられ今日まで不干渉主義を執られ、全国稀に見る自治、自主独立の羨むべき団体として定評のある模範的団体であつたに拘らず、事実を殊更歪曲し当局の不信感を招くような陳述書を提出するなど、その他尊い自治権を自ら狭ばめ破壊するような数々の行為等一ケ年有半に亘り、あらゆる手段を弄して対内対外向にあくなく続けられ而も未だ今もつて虎視たんたんとせられおり、一片の反省や悔の色もなき状態である。かくては、本会の威信、体面、綱紀の維持上これが放置は絶体に許されず、只々傷を深くするのみにてその行状には情状酌量の余地はないものと認められる。これらの行為の事実は、定款第十七条第一項第三号の「本会の体面をけがした者」及び同第四号の「本会の綱紀を乱した者」に充分に該当するものであり、会員の殆んどはこれを認め、会員中優に三分の二(五二三名)を超える(六六八名)会員より速かなる除名処断の手続取り運びの要請もあつたものであるので、これに基き山本美代氏の除名の決議を求めるものである。

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